『英雄たちの選択・板垣退助“自由民権”の光と影』NHKBS(令和2年10月7日放送)


NHKBSプレミアム『英雄たちの選択』で板垣退助の特集をしてくださった。

題名からして「光と影」とあるので、どんな内容かとハラハラしながら視聴。3カ所ほど完全な間違いがあったし、解釈の分かれる部分も存在したがおおむね良い内容だった。


私が心配した理由は、ここ最近のNHKでの板垣の描き方は、首を傾げるようなものが多いためである。以前、NHKのとあるディレクターさまとお会いしたが、この人物も左巻きの典型のような人物で、後で調べたら終戦特番などでも偏向した番組ばかりを制作している人物だった。
自由民権運動を正確に描くなら、その起源となった【征韓論争】が何故起こったのかに対しても相当の時間を使って解説する必要がある。


そこをスルーして「藩閥政治が…」とか「自由を求めて…」とか言う話になれば、完全なるファンタジーの世界に突入するであろうと感じるからである。


番組タイトルに【何故運動は挫折したか…】とあるが、そもそも「自由民権運動」は挫折したのか?

「挫折した」という前程にミスリードされている感がいなめない。

「自由民権運動」の結果、【国会】も開設されたし【不平等条約】も撤廃された。「自由民権運動」の中心となった、板垣の【愛国公党・愛国社・自由党】は、連綿と続き、今の【自由民主党】に受け継がれている。

これは、世間では「挫折」とは呼ばず「成功」あるいは「成就」と呼ぶ。


『帝国憲法』発布の30周年の時、板垣は伊藤博文と共に顕彰され、さらに50周年の時に、国会議事堂内に板垣、伊藤、大隈重信を【憲政の父】として讃え銅像が建立された。

『自由党史』の中でも、自由民権運動が成就して世の改革が成された事を誇りと威厳を以って記されているが、それがどうしたことか「挫折した」事にされ、「光と影」と題された番組にされてしまうのは何故だろうか。…そんな訳で「不安9割、期待1割」で番組を視聴することになった。


また、高橋源一郎氏のコメントは「やっぱりこの人、左巻きなんだなあ」と思われる内容が散見。左翼の人は「左翼史観」で物事を見るので、それに適合しない部分を批判するが、その批判は「一般中立の歴史観」からすれば的外れであることが多い。なので、そもそも『社会主義の脅威』を論述している板垣退助とは価値観が対極にある。板垣特集のコメンテーターに向くとは思えない人物である。

昨今は「リベラル」という言葉が「左翼」の隠れ蓑に使われることが多い。偏った思想の人物より、もっと歴史に詳しい先生をお呼びした方が良いのではと感じる。私がお会いした中では、江崎道朗先生は板垣退助に関しても非常にお詳しかったし歴史観にブレがなかった。次回、板垣の特集があったならばこういう人選をして欲しいものである。


真辺美佐先生の「板垣は国体を二分するものとして『私設国会論』を望んでいなかった」というコメントは良かった。しかし、このコメントを採用しながら、民権論者が『私設国会論』を支持していたかのように番組が進むところは(おいおい)と思いつつ。

真辺先生は、東京品川の板垣百回忌にもご臨席を賜り、墓前で記念講演をして頂いた。元宮内庁書陵部で『昭和天皇実録』を編纂されていた方で、流石と思う切り口で分かり易く解説して下さった。


「不安9割、期待1割」で番組を観たが、ラストの磯田道史さんのコメントは非常に良くて救われた。(10月14日朝8時~再放送されます)


前へ次へ
投稿日:2020/10/07

お問い合わせはこちら